どどど

だっしゅつ

重力

 

 年末の駆け込み追い込みずっと「なにかやり残したことはない?」「これで気持ちよく新年を迎えられる?」と問い続ける(必要以上の)焦燥感と、年始の勢い清々しさ「今年もよろしくお願いします」「新しい年はもう始まりましたよ」としゃっきり挨拶をしてゆかねばと背筋を伸ばす緊張感とが、ようやく緩められそうで、心底安心している。
 なんかもっとこうしたかった、年末年始。とも思わないでもないけど、年末年始がどうこうだけでなくって、それよりもこれから2024年という1年があるのだし。もちろん2023年にはもう、年末がどうあったって、1年があった。
 たぶん元日にひいたおみくじが小吉で、なんでもかんでも否定形だったのがひっかかってるんだろう。やめてよもう、勘弁してよ、と思ってそそくさとくくりつけた。
 去年の元日にひいたおみくじは吉で、書いてあった文言もすきで、部屋のみえるところに貼って、指標みたいにして過ごしていた。だから今年も、と思ったところがあったのだけれど。
 こうなるような気はしていた。
 年末は年末で、掃除ができなかった。
 今朝になっていろいろと、部屋のなかのものの置き方とかそもそもそれがあることとかが気になり始めて、ためこんでいたものを処分したり、片付けたり、紙もののかけ方を変えたりしていた。
 もともとは、「雨の日は太陽光が足りないので、そういうときのための照明をいつか買えたらいいな。メモしておこう」と、メモしに行っただけなのだけど、気になると模様替えに集中してしまって、結局そのメモはしていない。
 雑食でいたい、なにかをするにはそれで遠回りになったりちょっとわかりにくくなってしまうかもしれないけど、あれこれやってみて今は雑食でいてほしい、と自分に思っているので、もともとの性格もあるけれど、好みがあちこちに散らばっている。
 だから部屋もそういうふうにしていた、のだけど、少しずつ変わってきていて、そのなかでも「ちょっと変えたい」があり、あまりにノイズをそのままにしておくと今度は余計な混乱が増えてしまうので、今日はできる範囲で動かした。
 ああ、そう、これ、気になってたのか、といざすっきりしてみれば気付くし、ひとつ動くとそのまわりも違ってくる。
 そもそも今日そうやって模様替えするに至ったのは、きっと昨日必要があってかけた掃除機と、そのついでによく使うかばんや書類や、年末に届いた箱を片付けたこととで、部屋全体がほんのすこし整ったからだろう。
 それに、昨夜ご飯を食べ終えてから、雑誌を読みたくなって、2~3年前の雑誌を数冊読み返していた。とにかくたくさんの人の服や靴や香水やをざっと見て、見ながら、自分の手元にいまあるものと重ねていた。いつも着ている服、これから着る服、外のこと、内面のこと。
 ひと通り片付けてきりのいいところで、なにもせずに窓の外を眺めていた。なにもしないのがいいな、と思って、そのまま座ろうとしたときに、お香があることを思い出して、引き出しからお香を出して炊いた。
 香の上から下へ熱が伝わってゆくあいだ、煙が細く白くなめらかにのぼっていくのを見ていた。途中あるところで煙がたまって、いっせいにほどけるような様子をみせると、リボンがするするとほどけて地面にたまっていく光景を思い浮かべた。重力。わたしの見慣れているものの動きと逆さまだな、と煙を見て思った。
 今年は辰年。あと閏年
 この時期にこういうことをいうと新年の抱負みたいになるのでそれはちょっと不本意なのだけれど。落ちのない話をしていたい。聞きたい、読みたい。
 ドラマチックじゃないところにある人間の機微を、ときどき知れたらうれしい。